パミールの3つの峠
神奈川ヒマラヤンクラブが1994年に踏査したパミールの3つの峠(ボロゴル峠、カランバール峠、ダルコット峠)の記録である。8世紀半ば唐の高仙芝将軍が1万の人馬を率いてダルコット峠(4575m)を越えたという。隊員はそれをトレースした。現在でもこの地域に入った外国人は非常に少ない。
MP4(640*480)
MP4(320*240)
作品時間:76分 キャスト:広島三朗、菊田佳子、清水充治、尾上弘司、青木正樹、村上史子、領家彰子、金子典明、木本秀信、深見幸代 撮影時期:1994-08-01 _ 1994-08-14 カメラ:菊田佳子 編集:Original CV 制作:神奈川ヒマラヤンクラブ
メディア販売:DVDを購入ご希望の方は、神奈川ヒマラヤンクラブ(尾上弘司 様宛 spantik@nifty.comfax:0465-81-1089)までご連絡ください。
コメント:sue
神奈川ヒマラヤンクラブのメンバーの方からこのビデオテープをお預かりし最初に拝見したときに何かジーンと熱くなるものがあった。
このビデオテープは10年前の1994年にパキスタン北部にあるパミールの3つの峠を撮影したものである。撮影した方は隊員のお一人で、プロのカメラクルーではない。当時の8mmのビデオカメラの技術の限界と、カメラワークの拙さがあるにはある。しかし、そういうテクニックだけの世界ではない、何かもっと大きなものを伝えたいという想いが映像からひしひしと伝わってくるのである。
広大な草原で夏村となっているボロゴル峠(3,804m)、切り立ったU字谷の中に美しい湖をもつカランバール峠(4,343m)、ズィンディハーラム氷河を歩いて越えるダルコット峠(4,575m)。すべてはパミールならではの光景であろう。しかしながら、この地を踏んだ外国人は非常に少ない。よって、この映像は現在にいたってもその価値をまったく失っていないのである。
また、ここには世界を変えた歴史がある。
8世紀に、東の文化圏である唐と西の文化圏であるイスラム帝国がこの地で衝突した。唐の高仙芝将軍は1万の兵士とともに、ダルコット峠越えの壮挙を果たし、一時、パミールを制圧したが、タラスの戦いで敗れた。このとき、唐の技術者が捕らえられ、初めて製紙法が西側文化圏へと伝えられたのである。
そして、製紙法は10世紀にカイロへ、12-13世紀に神聖ローマ帝国に伝わった。15世紀にグーテンベルクが活版印刷術を発明すると、16世紀にはルターがこの活版印刷で聖書やビラを頒布し、宗教改革を起こした。同時に、識字率があがり、ヨーロッパの文化レベルは一気に高まった。このエネルギーが16-17世紀の大航海時代へとつながり、そして、18世紀の産業革命でヨーロッパの優位は揺らぎないものとなるのである。
紙という知識を表わす源泉が、このパミールを越えて西側文化圏へ移っていったという事実。ダルコット峠を越えていかねばならなかった兵士達がこの歴史を知ったとすればどのように感じるであろうか。
人里から遠く離れ、厳しくも美しい自然の中にあるパミールにも、歴史は押し寄せていたのである。隊員達は時空を越えてパミールを肌で感じ、そして、その事実を私達に伝えようとしている。
その姿に心が熱くならざるを得ないのである。