[撮影四方山話] ロンドン・オリンピックのカメラ・アングル
- オリジナル・シー・ヴイ代表の末次です。
ロンドン・オリンピック。ガンバレ、地球人!
----------------------------------
<目次>
1.[撮影四方山話] ロンドン・オリンピックのカメラ・アングル
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品 →「雨の谷川岳・烏帽子沢奥壁凹状岩壁」
----------------------------------
.[撮影四方山話] ロンドン・オリンピックのカメラ・アングル
ロンドン・オリンピックが開催しました。開会式はいつも意表をつく演出ばかりですが、練り抜かれたメインカメラのポジションやアングルにも、さすがだなあと関心してしまいました。一分の隙もなかったですね。
もちろん、大会にはそれだけのお金がかかっているわけですし、何よりも残る映像が未来への世界遺産になるわけですから、手を抜くなんてことはあり得ないし、もし、あったとしたら、それは人類の損失になってしまいます。
さて、大会が進むに連れて、各会場での映像がどんどん入って来ます。今回も新たに固定カメラが導入されているところがあり、このように選手の表情も撮れるのかと感心します。
例えば、水泳会場の4コースと5コースのスタートに設置されているカメラ。背泳ぎのスタートの瞬間に選手の顔がクローズアップされます。
でも、この水泳会場でちょっと気になるカメラがあります。天井に設置されているカメラですが、1コースと8コースの選手の頭が曲がって見えます。天井が低いと聞いているので、1コースから8コースまでの全体を入れるには魚眼レンズを使わざるを得なかったのでしょうが、かなり違和感がありました。
でも、この4年に一度の大イベントをしっかり撮り切ろうとする映像関係者の創意と工夫に拍手したいと思います。皆さん、最後まで頑張って下さい。
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品
作品名「雨の谷川岳・烏帽子沢奥壁凹状岩壁」
制作 Original CV
撮影時間 10分程度
実を言うと、今回紹介するものはビデオ作品にはしていません。
しかし、ビデオ作品を制作する上でこのような苦労もあるのだということを皆さんにお知らせすることも意味のないことではないと思います。
昨日(6/9)の夜、横浜を出発するときから、ずっと雨である。
「なぜ、雨なのに行くのか?」と問われると、
「谷川岳の天気は現地へ行ってみなければ、わからない。」
「明日の天気は回復傾向にある。」
或いは、
「降水確率が50%だとしても、50%は雨が降らない可能性があるのだから、それに賭ける。」
とか、まるで丁半博打のような世界なのだ。
それを真面目顔で話をするクライマーは偉いと思う。
深夜に、一ノ倉沢出合いの駐車場に着いたら、驚いた。何という車の多さ。雨という予報にもかかわらず、これほどの人たちを魅惑する一ノ倉沢はよっぽど偉いのだ。
明るくなってくると、バタン、バタンと車のドアの音がしきりに聞こえた。皆さん、お出かけなのだ。私たちは少しでも天気が回復しないかなと様子を窺っていた。
とうとう8時半近くになった。これ以上出発が遅れると暗くなるまでに戻って来れない。限界だ。
陽気なJさんは
「これ以上待っても無駄だよ。びしょ濡れになるのを覚悟するか、しないかだけの問題だよ。」
と中止することなんて微塵も考えていない。
リーダーのSさんは「うーん、行こう」と決断した。
この後、登り終わって降りて来てから、Sさんはその決断について次のように語った。
「雨の中で凹状岩壁を登る私たちの実力に不安があったわけではない。皆が行こうという気持ちになっているかを確かめたかったのだ。」
さすがにリーダーである。
一ノ倉沢出合いを出発して、テールリッジの末端に着いた。今年は雪が多い。露岩帯が例年に比べ雪で埋まっている。その後、つるんこ、つるんこと雨で滑るテールリッジを登ったが、気分が晴れるわけではない。帰るときのテールリッジの降りを考えると憂鬱になるだけだ。
1ピッチ目。Jさんのリードで始まった。Jさんの動きを見ていると、出だしは簡単そうだが、濡れている状態での大きなムーブは怖い。彼の運動能力の高さを思い知らされた。
4ピッチ目。凹状部分を抜けるが、雨が一段と降って来た。ビデオカメラは水に浸かったような状態になったので、ここで撮影を止めた。
5ピッチ目。Jさんが左にルートを取って行き詰った。浮石でぼろぼろで支点をとることができないようだ。一旦、少し降りて戻って来てから、右のルートに入った。これが正規のルートだが、ここら辺りはぼろぼろなので要注意だ。待っている間に、雨で手がかじかんで来た。手を摺り合せるが、温まらない。
6ピッチ目。先の地震で崩壊したところだ。崩壊したところがきれいになって、面白いルートが引かれている。
8ピッチ目。雨で濡れているので用心しながら、クラックを乗り越えて終了。
帰りは中央稜を懸垂下降。濡れてロープが重いので、シングルロープ、或いは、ダブルロープの懸垂を組み合わせながら用心深く降った。
テールリッジを降り終わり、雪渓に出た頃にようやく雨が上がった。これから天気は回復するのだろう。今日一日、一ノ倉沢の大岩壁に、私たち3人以外のクライマーはいなかった。まったくの貸切状態だった。静かであるという意味でこれ以上のことはない。めでたし、めでたし。