[素晴らしい教材から] 二人の人気噺家による落語「中村仲蔵」
- オリジナル・シー・ヴイ代表の末次です。
あけましておめでとうございます。皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。
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<目次>
1.[素晴らしい教材から] 二人の人気噺家による落語「中村仲蔵」
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品 → 「米寿おめでとう!」
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1.[素晴らしい教材から] 二人の人気噺家による落語「中村仲蔵」
初代・中村仲蔵は血筋が重んじられる歌舞伎の世界で、稲荷町から名題(なだい)にまで昇進した極めて稀な役者です。
落語「中村仲蔵」はその仲蔵の苦労に満ち、芸に命をかけた生き様の噺です。
私がこの落語を最初に聞いたのは数年前、立川志の輔によるものでした。
うーんと唸り、涙し、心を震わせ、この噺がいっぺんで好きになってしまいました。
そして、先月、再び、この落語「中村仲蔵」を聞いたのですが、その噺家は柳家花緑で、こちらも実に見事に話しきって、私はまたもや心を震わせたのでした。
ところが、立川志の輔の「中村仲蔵」と柳家花緑の「中村仲蔵」では、聞いた後の余韻がまったく違うのです。同じ題材の落語「中村仲蔵」を聞いているにも関わらず・・・。
立川志の輔は現在、最も売れている噺家と言っても過言ではありません。
2006年からなんと8年間も渋谷PARCOで1か月口演をし、チケットが入手できないほどだというから驚きです。
その立川志の輔の師匠が落語会の天才と謳われた立川談志であり、その立川談志の師匠が落語家として初の人間国宝になった柳家小さんです。
そして、柳家小さんの孫が戦後落語会最年少の22才で真打になった柳家花緑なのです。
つまり、柳家小さんを頂点として、天才の芸を継承してきたのが立川志の輔であり、サラブレッドの血を継承したのが柳家花緑ということになります。
この二人の噺家による落語「中村仲蔵」を聞いて、どのように余韻が異なるかというと、
立川志の輔のものは、天から一滴落ちて来た水が山野を流れて大河となり滔々と海に注ぎ込んでいくような人間の壮大なドラマを感じます。
一方、柳家花緑のものは、江戸時代の生粋の江戸っ子が現在に蘇り、渋谷の大通りを肩で風切っている爽快な感じです。
この余韻の違いを作り出すものは二人の噺家が話すリズムや間にもありますが、それ以上に落語「中村仲蔵」の中に挿入した二人の噺家の創出する説明や小噺にあります。
立川志の輔は中村仲蔵が苦境に陥ったとき、それをどのように受け止め、どのように悩み、どのように打開していくのかを実に細かく描き出します。
天才が時として見せる閃き、それは凡人には理解できない領域なのですが、それを凡人にでもわかるように、その心理を細かく論理的に説明していきます。この結果、私たちは自分の経験と重ね合わせて、中村仲蔵の生き方に共感し涙するのです。
一方、柳家花緑は中村仲蔵を支える女房を登場させ、「もし、亭主をダメにする女房ならこのような言い方をするでしょうね」と、その例を見せるとき江戸の庶民気質が光となって射し込み、風となって吹き抜けます。
多分、落語の通はこの余韻の違いが堪らなく好きなんだと思います。
噺家を代えて同じ落語を聞いて楽しむし、また、同じ噺家でも齢を重ねると落語が変わっていくので、自分の好きな噺家の落語をずっと聞き続けるでしょう。
落語は噺家も聞き手も成長すればするほど奥が深く面白くなります。
そして最早、落語は娯楽という領域を越えて、教養や知識レベルの高い国にしか出来ない文化の象徴になっていると言えます。
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品
作品名「米寿おめでとう!」
制作 神奈川県男性
作品時間 31分
九州は古代より国際交流の最前線に立っています。
上海の港から船で漕ぎ出し、北極星を左手に見てずっと進んでいくと、薩摩に着きます。
また、魏志倭人伝に書かれていますように、朝鮮半島の狗邪韓から南に千余里行くと対馬であり、更に南に千余里行くと壱岐であり、再び、南に千余里行くと肥前に着くのです。
朝鮮半島と九州の間に浮かぶ島々は間違いなく各勢力の情報が飛び交う国際交流の最前線であったと言えます。
その小さな島のひとつで、二人のおばあちゃんが米寿を迎えました。座敷は手製の作り物でクリスマスのように飾られています。
「あいたー、よかですねー。美人やねー。」
ちゃんちゃんこを着て、写真の前でポーズをとるその姿に拍手喝采です。
日本各地に散らばっていた子供たち、孫たち、ひ孫たちが一同に会し、それぞれがおばあちゃんを祝います。
工夫を凝らした余興が終わると、ひ孫の一人はおばあちゃんへの手紙を開きました。
「読んでよかですか。
これまで辛いことや楽しいことがいっぱいあったと思います。
でも、88になっても元気なのは笑顔だと思います。
たくさん長生きしてください。笑顔で過ごしてください。」
騒がしかった座敷は静まり返り、おばあちゃんの子供たちは目頭を押さえました。
「東京オリンピックまで生きらんばよ。」
<<お客様からのご感想>>
期待以上の編集のセンスと技術にプロの技を感じ感動しました。
お陰様で、私の想像以上で理想的な作品にしていただき大変に嬉しく思います。