[撮影四方山話] ナレーション
- オリジナル・シー・ヴイ代表の末次です。
深夜に東の空から半月が昇れば、西の空にはこと座のベガ、わし座のアルタイル、白鳥座のデネブが夏の大三角形を作っています。立秋が過ぎても、まだまだ真夏の世の夢は続きそうです。
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<目次>
1.[撮影四方山話] ナレーション
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品 「九十周年感謝の集い」
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1.[撮影四方山話] ナレーション
昨年の七月頃、ある保育園の園長先生から電話がかかって来ました。
「末次さんね、来年は当園の90周年に当たるのよ。80周年の式典ではその歩みについて、スライドを使って私が話しをしたのだけれど、今回はその部分を10-20分程度の映像にまとめようと思うの。それを末次さんにお願いしたいの。
また、今回はパネルを作ったり、本の出版をしたりと様々な企画を考えていて、それぞれに職員をアサインする予定なの。もちろん、映像についても職員をアサインするので、その職員と協力してやって下さらない?」
というわけで、1週間後には保育園におじゃまして、担当の職員の先生と打ち合わせを行いました。
すでにある資料は80周年で使ったスライドの写真と原稿。そこにこの10年間で積み上げた実績を加味し、また、古い写真もたくさん出てくるのではないかというお話し。
難しいなと思ったのは、私自身がどこまで踏み込んでやるのかという線引きのところ。深く入り込めば切りがないし、かと言って、上っ面を撫でていたのでは良いものは出来ません。予算の都合もあるし・・・。
そこで、担当の先生とお話しをした結果、ざっくりと次のように進めようということになりました。
・スライドショー映像は10分程度とする。(それ以上は間延びして視聴者が飽きてしまうので)
・スライドショー映像はOriginal CVが作る。
・ナレーション台本作成とナレーションの吹き込みは保育園サイドで行う。
そして、あっという間に1年が過ぎ去り、先月(7月)の初めに保育園から電話がかかって来ました。そろそろかな?と思っていましたが、昨年打ち合わせを行った後、この1年間なんの進展もなかったのです。
電話の相手は打ち合わせを行った先生とは別の先生でした。
「8月の始めに式典を行うことになりました。そして、ナレーションは入れない方向でやることになりました。スライドショー映像のみで行うことになりましたので、宜しくお願いします。」
「エッ。」
ナレーションを入れずに映像だけで耐えられるのか? 確か、この映像は式典のオープニングで流すという話だったので、その肝心のオープニングで座が白けてしまっては何の意味もないが・・・。
一方で、式典まで一か月を切った現在、保育園の内部ではてんやわんやの状態になっているのではないかと容易に想像がつきました。各界の代表者をお招きをするのでしょうから、その出欠の確認や調達する備品が間違いなく揃うのかという、やきもきするようなことが山積みなのでしょう。
とは言っても、私に任されている式典のオープニング映像はきっちりと作らねばなりません。まず、絵を作って、それにBGMのみを付けたものをお見せしましたが、やはり、訴える力は欠けています。
仕方ない、やるか。
80周年の原稿を見ながら、2-3日でナレーション台本を作成し、私の声でナレーションを吹き込みました。もちろん、これはナレーションのサンプルなのですから、もし、これが良ければ、このナレーションの声の部分は保育園サイドで吹き替えていただきます。それをお見せしたところ、
「やはり、ナレーションが入るといいわね。それに末次さんの声も落ち着いた感じでよかったわよ。園長先生も末次さんの声で良いって、おっしゃってました!」
「ホントですか?」
その瞬間、はめられた、って思いましたが、ま、園長先生が良いと言うのであれば仕方がないな~。
つまり、各界の代表者が揃う大式典のオープニングで、私はナレーターとしてデビューすることになったのでした。
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品
作品名 「九十周年感謝の集い」
制作 ***保育園
作品時間 105分
朝9時頃、都内のあるホテルのロビーの入り口に着くと、そこには「九十周年感謝の集い」と書かれた大きな垂れ幕が掲げられていました。
今日一日は、ほぼこのホテルを貸し切り状態にしてしまうのでしょう。
さて、記念式典が行われる4階に行ってみますと、準備は万端に整えられていました。数多くの大きな花束は一列に並べられ、会場にお越し下さる方が迷わないように受付番号別に案内の職員の皆さんが立っておられました。
今日は皆さん、日頃の保育服ではなく、華麗なドレス姿です。訪れた市会議員の方が職員のお一人に声をかけられました。
「今日はきれいだね~~。」
「あら、聞き間違えかしら。もう一度、言い直して下さらない。」
「これは失礼。今日も!!きれいだね。」
ニッコリと笑顔で対応されました。
さて、記念式典の開会10分前に、私がナレーションを行ったスライドショー映像が会場に流されました。
開会のことば、理事長による式辞、園長による歩みの説明、記念品贈呈、永年勤続職員の表彰が終わった後、来賓の祝辞です。
市長、市会議員議長、都議会議員の皆さんが次々に壇上で述べる内容は園長先生と職員の皆さんの保育に対する強い情熱とたゆまぬ努力への賛美です。この保育園が築き上げて来た数々の実績をご存じない方はいないのです。
その実績については都の担当課長の方の祝辞がわかりやすいかもしれません。
「都は皆さんご存知のように大きな課題を抱えています。それは8千人に及ぶ待機児童です。だからと言って、保育の質を低下させていいということではありません。
都が目指す保育の内容はすべてこの保育園ですでに行われているのです。このような保育園もあるのかと驚かされました。」
万歳三唱で記念式典を締めくくった後、5階に会場を替えて、感謝の集いが開催されました。ここは天井の高い大ホールとなっていて、前段はステージ、そして、後段はぎっしりと円卓が並べられています。
まずはステージで鏡割りです。一の樽、二の樽、三の樽の周りに関係者が招かれ、前市長による音頭で酒樽が割られました。乾杯。そして、ディナーサービスが始まりました。
次にステージでは獅子舞の登場です。さすがお祭りの町だけあって気風が良い! 獅子に対して会場に訪れた皆さんからあふれんばかりの祝儀袋が渡されます。
職員によるショパンのピアノ演奏、二宮尊徳の合唱、ゴレンジャーならぬホイクマンの参上と次から次へと余興が重ねられて、3本締めでお開きとなりました。
保育園を運営する社会福祉法人の理事の皆さんが並んで、ご参列いただいた皆さんをお見送りします。最後列に並んだ園長先生には「これからも頑張って」と握手を求められます。そして、笑顔で最後のお一人まで見送られました。
撮影としてはこれでおしまいなので、ビデオカメラを片付けようとしていると、「園長先生、皆さんがお待ちです。」と宴会場に戻って行かれました。
あれ、まだ、あるのかしらん?
宴会場に戻ってみると、職員の皆さんが円卓の席に着かれています。
司会者から園長先生にマイクが渡されると、
「司会者から後期高齢者の私にバトンタッチされました。今日は皆さん、本当にありがとうございました。皆さんがこの式典に花を添えたことは間違いありません。
このホテルに飲み放題食べ放題というメニューはないのですが、これからは皆さんの飲みたいもの、食べたいものを無制限にお頼み下さい。箸休めを楽しみながら、それで本当のお開きと言うことにしましょう。」
「それじゃ、スパークリングワイン。」「私も。」「私も。」 ・・・。
これ以上、私が居る場所ではありませんので、園長先生に挨拶を申し上げてそそくさと退場しました。
電車の窓から流れる景色を見ながら、イザヤ書6章がふと頭に浮かびました。
「わたしはまた主の言われる声を聞いた、『わたしはだれをつかわそうか。だれがわれわれのために行くだろうか』。
その時わたしは言った、『ここにわたしがおります。わたしをおつかわしください』。」
あの園長先生が「だれをつかわそうか。」とおっしゃったとしたら、先ほど円卓に座っていたほとんどの職員が「ここにわたしがおります。わたしをおつかわしください。」って言うんだろうな、と思いながら・・・。