[撮影四方山話] ルーフバルコニーの楽しみ方
オリジナル・シー・ヴイ代表の末次です。
オリジナル・シー・ヴイは12月5日に横浜から北九州へ移転します。
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<目次>
1.[撮影四方山話] ルーフバルコニーの楽しみ方
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品 「平成28年合唱コンクール ***中学校」
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1.[撮影四方山話] ルーフバルコニーの楽しみ方
12月5日の引っ越しまで、いよいよ秒読み状態に入って来ました。
このマンションで過ごした20数年間が走馬灯のように頭を駆け抜けていきますが、良い想い出ばかりだったなというのが実感です。
この部屋の特長は住居の敷地が58平方メートルあるのに比べて、ルーフバルコニーが48平方メートルもあることです。
ここに住み始めた頃、このルーフバルコニーを活かさない手はないと思いました。当初は仲間たちとバーベキューでもやろうかと思いましたが、この20数年間で一度もやったことはありません。
仲間と楽しんだことと言えば、一度だけ花火をしたことくらいでしょうか。
それ以外はいくつかの鉢植えが置いてあるだけで、時に濡れたテントを乾かすことに役立ったことはありましたが、総じてあまり活用をして来ませんでした。
しかし、昨年の冬から楽しみ始めた早朝の星空ジョギング、そして、グラハム・ハンコック著「神々の指紋」を読んで以来、俄然、星空に興味を覚えて来るようになってから、ルーフバルコニーの位置づけが変わって来ました。
夜の雲の無い日は何度もこのルーフバルコニーに出て、星空を見上げるようになって来たのです。
今はオリオン座がドーンと見えます。このオリオン座というのは星空の華ですね。古代の人たちもこの星座にいろいろな夢を託したに違いないのです。
そして、このオリオン座を中心として、時計回りにぎょしゃ座のカペラ、おうし座のアルデバラン、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、ふたご座のカストル、ポルックスと明るい星がたくさん見えます。
テレビの下世話なバラエティ番組を見るぐらいだったら、その鬱陶しさから抜け出して、ワイングラス片手にルーフバルコニーに出て、星空を見上げている方が心安らぐものです。
この部屋を去るときになって、初めて、ルーフバルコニーの楽しみ方に気付いたという訳です。
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品
作品名 「平成28年合唱コンクール ***中学校」
制作 ***中学校PTA
時間 167分
撮影前日、合唱コンクールで使う十数台の機材を一旦、全部セッティングして動作確認を行いました。バッテリなどの補助部材も同様です。
撮影当日、魔物が出ることを痛いぐらいわかっていますから、準備段階で完ぺきを尽くすというのは当然のことです。一寸の隙もあってはなりません。隙があれば、そこから魔物が入って来ます。
過去に、バッテリが切れた、SDカードのメモリが一杯になった、誰かが固定カメラに触って、カメラがあらぬ方向を向いてしまったなどということはどんなに準備を怠らなくても、その日、当たり前のように起こるのです。
それは、一人で同時に十数台の機材を完ぺきに使いこなすことなど到底出来ないということの証なのかもしれません。ヒューマンエラーは必ず起こるということです。
合唱コンクール当日、いつものように午前3時に起床しました。
そして、いつもなら5時からジョギングに出るのですが、この日は早目の4時半からジョギングに出ました。1時間ほど汗を流してシャワーを浴び、朝食を済ませた時は6時15分頃だったと思います。
この日はサブカメラマンのAさんが6時45分に来て、ピックアップする予定になっていますから、それまで30分ほど時間がありました。
ここで何を思ったのか・・・。
先ほどジョギングから帰って来た時、ポストに入っていた手紙を開けると、印鑑を押して至急に返信して欲しい旨のことが書かれてあったので、それを片付けてしまおうと思ったのです。
明日でも全然構わなかったのですが、そのときはそれを片付けてしまおうと思い、印鑑をその文書に押して封をし、わざわざ5分ほどかかるポストまで投函しに行ったのです。
投函から帰って来て、一仕事終えたなと椅子に座って、ボーっとしているとAさんから携帯に電話がかかって来ました。
「すみません、5分遅れてしまいました。今、到着しました。」
「エッ!」
確かに時計は6時50分を指しているではありませんか。自分は何をしていたんだろう。目は開いていても頭の中は眠っていたんです。
これはいけない、とすぐに着替えて、機材を運び出し、Aさんの車に積み込みました。Aさんは高速道路をすっ飛ばして現地に到着。当初の到着予定時刻を10分ほどオーバーしていました。
でも、落ち着いていれば何ということはなかったのです。時間はたっぷりとあるのですから。
職員室に行き、挨拶をした後に、本日合唱コンクールが行われる体育館に入り、機材の設置に取り掛かりました。固定カメラを一通り設置した後、最後にセンターマイクを上部から吊り下げる作業を行います。
ステージ前の上部にネットを張るためのワイヤーが左右に引っ張られて設置されています。このワイヤーからひもを垂らしてマイクを吊り上げるという作戦です。
そのためにはひもの一端に重しを付けて放り投げ、上部のワイヤーの上を越えていかなければなりませんが、ステージ下からではワイヤーまでとても放り上げられるような高さではありません。
そこで、体育館の左右に張り出した2階部分に一旦、ひもをつけた重しを投げ上げて、そこからさらに上部のワイヤーめがけて、重しを投げ上げるという2段階の手順で進めることにしました。
まず、30メートルのひもなんですが、前日、もつれないように束ねて、丁寧に結んでいたのです。ですから、慌てずに結び目を解いて、ゆっくりと束をほどいていけば何の問題もなかったのです。
ところが、慌てていた自分は結び目を解くことと、束をほどくことを一気にやってしまったのです。ぐしゃっともつれてしまった30メートルのひもは容易にほどけません。
時間はどんどん経っていく・・・。このときばかりは声を出して自分に言い聞かせました。
「落ち着け。時間はたっぷりとある。ゆっくりとやれ。」
ほどき終わるまでの時間は実際にどれくらいかかったのでしょうか。わかりません。でも、自分の中では1時間にも2時間にも思える時間でした。
さて、次にひもの一端に重しを付けて、2階に放り上げました。成功!
そして、2階からワイヤーの上部を目指して重しを放り投げたのですが、ワイヤーの上を越えずにワイヤーに取り付けられているグリーンのネットに引っかかってしまったのです。さらに悪いことに重しとネットが絡んだまま動かなくなってしまいました。
”どうするんだ。センターマイクが設置できなければ、収録システムに致命的な欠陥が生じてしまう。”
”落ち着け。なんとかなる。いや、なんとかする。”
ひもを何度も何度もゆるめ、ひもを左右に動かしました。
”神様、どうか・・・。”
とうとう重しがずりずりと落ちて来ました。
”救われた! 神様、ありがとうございます。”
そして、予定通り、すべての機材をすべて予定の場所に設置して、撮影は始まりました。
6時間後、撮影は完了し、すべての機材を撤収しました。
翌日、各機材の収録データを確認したところ、固定カメラのひとつのバッテリが途中で切れて、最後の部分が収録できていないことがわかりました。
今年も魔物が出ました。本番当日には必ず何かが起こるのです。