[撮影四方山話] おもてなし
- オリジナル・シー・ヴイ代表の末次です。
おいでなさいまし、北九州へ。
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<目次>
1.[撮影四方山話] おもてなし
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品 「仏壇の花」
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1.[撮影四方山話] おもてなし
「ウッソー、来ないなんて信じられない!」
3年連続で計6週間程滞在させて頂いたカナダ・スコーミッシュのA夫妻に、「4年目の今年は行くことが出来ません。」とメールを打った時の彼らの反応でした。
彼らは若いというのに気配りが細やかで、彼らのおもてなしの気持ちには、本当に頭が下がりました。
話は11年前に戻ります。
11年前の2006年、私はB夫妻に伴って、ギリシャ・カリムノス島にクライミングに出かけました。その島の中のさらに小さいテレンドス島に行ったとき、「日本人に会うのは初めてだ」と言われましたから、当時のカリムノス島はまだ日本人によく知られていないエリアでした。
日本に帰って来て、その素晴らしいクライミングエリアをC夫妻に伝えると、翌年、C夫妻もギリシャ・カリムノス島へ出かけていきました。
そのとき、現地で、カナダ・スコーミッシュから訪れていたA夫妻に出会って意気投合したというわけです。別れ際にA夫妻から
「来年はスコーミッシュの最も素晴らしい時期である8月にぜひ、
いらして下さい。」
とC夫妻に声をかけられたのだそうです。C夫妻も「ハイハイ」と返事をしていたようですが、こういうことは口約束ということもあるし・・・。
ところが、翌年6月頃、スコーミッシュのA夫妻からC夫妻のところに「いつ、来るの?」というメールが頻繁に届いたのだそうです。
「何日滞在してもOK。冷蔵庫の中のものは好きなだけ食べて良いし、車も使っていいのよ。」
そして、何よりもA夫妻のスコーミッシュの住所はクリフサイドと、岩場に近いところに住んでいるようなのです。もし、そうだとしたら、こんなに便利なことはないわけです。
そこで、C夫妻から私のところへ
「あまり熱心に来いと言われるし、ギリシャ・カリムノス島の縁もあるから、行ってみませんか」
とお誘いがありました。
「ほんじゃまあ、行ってみますか」という軽いノリだったのですが、カナダ・スコーミッシュのA夫妻の家に着いたら、驚きました。
まさに、崖の途中に建っている眺望最高の家なのです。
庭先から先は崖になっており、下から登って来たクライマーが庭先に頭を出して来ます。一方、玄関から出ていくと100メートル程先には次のクライミングエリアがあるというわけで、クライミング三昧というに相応しいクライマーにとっては堪らない場所でした。
滞在していたある日、A夫妻のご主人のバースデイパーティが行われ、20人ぐらいは集まって来たでしょうか。もちろん、私は初対面の人ばかりなのですが、皆さん、どうもどこかで見たような顔ばかりなのです。
「あっ」と気付きました。
彼らはスコーミッシュのクライミングガイドブックの口絵に写真が載っているバリバリの現役クライマーや写真家だったのです。
道理で・・・。
また、ある時、地元クライマーズ・ファンドの会長宅でパーティが行われた際に招かれましたので行ってみますと、スイス人やフランス人のクライマー達も来ていました。
こういうところでの情報交換はとても貴重で、日本の中にいても聞けないものばかり。
「世界中で、どこのクライミング・エリアが良かった?」
「南アフリカとキューバかなあ。」
「治安、大丈夫なの?」
「全然問題ないよ。素晴らしいところだよ。」
「へえーっ。」
万事がこんな感じで、私の足元は地についていたかどうか・・・。
でも、間違いなく言えることはスコーミッシュでの6週間は私のクライミング人生に於いて最も至福な空間と時間であったということです。あのような経験は今後、再び起こるとは思えません。
その機会を与えてくれたスコーミッシュのA夫妻に感謝することは当然のことなのですが、そればかりでなく、若い彼らから学んだことを今度は私が実行する番ではないかと思うのです。そうでなければ人類の知恵は伝承していきません。
さて、ここ北九州の家の客間も漸く修理が終わりました。布団は最大9組ほどあります。どうぞ皆さん、ご遠慮なく北九州へ足をお運び下さい。皆さんのお越しを心よりお待ちしています。
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品
作品名 「仏壇の花」
制作 オリジナル・シー・ヴイ
時間 7分
北九州の実家に戻って来て、まず最初にやったことは仏壇に花、御飯(おっぱん)を供え、焼香したことです。
信心深かった祖母は毎日欠かさず、仏壇の前でお経を上げていましたし、バリバリのビジネスウーマンで宗教には無縁と思えた母も父が亡くなった後は毎日のようにお経を上げていました。
ここで、私だけが何もしないというのはご先祖様に申し開きが出来ませんので、信心深くない私でも出来ることをひとつひとつやっていくことにしました。
さて、仏壇の花と言えば、定番の菊。祖母や母の時代に菊以外の花が供えられたということは記憶にありません。
そこで私も仏壇用の花として、菊を買いに行くことにしました。
1月のことです。近くの商店街の生花店の店先に3-4本の菊が束ねて置いてあり、仏壇用という表示がありました。
「こんにちは。仏壇用の花が欲しいんですけど・・・。」
店奥からおかみさんが出て来て、
「ハイハイ、仏壇用の花ね。今は丁度チューリップが出てくるときで、皆、これを待っていたのよ。悪いことは言わないし、まけておくからこのチューリップを持って帰りなさい。」
と、5本ずつ束になったピンクのチューリップ2セットを渡されました。
「お兄さん、チューリップの活け方を知らないでしょ。チューリップは10日程経ったら、お辞儀をしてくるので、そのときは茎を10センチ程切ればシャンとするよ。長持ちするから・・・。」
そのまま持ち帰って、仏壇に供えていた萎れた清楚な菊と交換してピンクのチューリップを活けました。
なんか、蕾のチューリップというのは妙に色っぽいんです。ぴっちりのチャイナドレスを着ている感じ。それが10本もあるんですから、仏壇全体にムンムンの色気が出て来ました。
ご先祖様は鼻血出さなきゃいいけどなあ。
ひと月程経って、チューリップが萎れて来たので、再び、商店街の生花店に買いに行きました。
「仏壇用の花を下さい。」
「そうね。今はこれかなあ。」
そう言って作ってくれたのが、ピンクのスウィートピーに黄色のフリージア。
「フリージアはまだ蕾だけど段々と咲いて来て、きれいになるわよ。」
持ち帰って、仏壇に供えるとかわいらしいのです。そうそう、若い時の松田聖子のよう。
またひと月程経って、スウィートピーとフリージアが萎んで来たので、再び、商店街の生花店に買いに行きました。
「仏壇用の花を下さい。」
「そうね。これからはカーネーションかな。それにしても、お兄さん、感心だね。仏壇用の花をまめに買いに来るとは・・・。
最近の人は面倒臭がって、仏壇用の花を造花で済ませることも多いと
いうのに・・・。
それじゃあ、桜をサービスするから持っていきなさい。」
「エッ、この時期に桜があるんですか。」
「生花店の花というのは季節に先立って咲かせるものなのよ。」
渡された花を持ち帰って、カーネーションは仏壇に、そして、桜の小枝は床の間に飾りました。
そして、3月中旬には床の間の桜は満開の花を咲かせていました。ご先祖様もさぞかし驚かれて、喜んでいるに違いありません。
めでたしめでたし。