[撮影四方山話] Clothing is optional.
- オリジナル・シー・ヴイ代表の末次です。
春。この響きが魅力的です。
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<目次>
1.[撮影四方山話] Clothing is optional.
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品 「Climbing and Diving in Thailand」(後編)
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1.[撮影四方山話] Clothing is optional.
前回に引き続き、タイ・プラナンの話から進めます。
20年前のタイ・プラナンは、現在ほど豪華なバンガローが多数乱立していたわけではなく、質素なバンガローの数が両手で指折って数えてもまだ余るぐらいのものでした。今では信じられないでしょうが、貸しテントがたくさん張っているような状態でした。ということは観光客全体でみても、20年前の数は現在の十分の一以下だったのではないかと思います。
また、ここに訪れる一般観光客とクライマーの比率は現在は7対3ぐらいだと思いますが、20年前ではこの比率は逆転していて、3対7ぐらいでした。つまり、圧倒的に一般観光客が少なかったのです。
では、オーバーハングの岩場に囲まれたビーチで、クライマーでない一般観光客とはどのような人達だったかというと、もちろん暖かい南国で余生を過ごしたいという年配の方もいらっしゃいましたが、なんと、ヨーロッパから来た若いヌーディストもあちらこちらで見かけました。
最初、私はヌーディストを発見したとき、面食らいました。また、依りによってビーチで彼女らとすれ違うこともあったのですが、動揺しました。彼女らは堂々としていますが、こちらは上を向いたり、下を向いたり、目線のやり場に困り、別に悪いことをしているわけではないのですが、気持ち的に恥じ入ってしまいます。堂々としている人間の方が明らかに強い。「負けたー」という感じです。
その後、私は地中海沿岸を点々と旅したとき、人の少ないビーチや有料のプライベートビーチでヌーディストをよく見かけましたので、ヨーロッパでは特別なことではないんだと思い、驚かなくなりました。
そうそう、カナダ・バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学の広大なキャンパスを訪れたときのことです。この大学を母校とする女性クライマーに案内してもらったのですが、ここは新渡戸稲造記念庭園もあり、天皇陛下、皇后陛下もカナダご訪問時に、ここにお立ち寄りになられたと聞きましたので、カナダでも名門大学です。
この大学のキャンパス内にビーチがあるので、そこに行こうということになりました。ビーチに降りる細い階段のところに看板があり、次のように書かれていました。
"Clothing is Optional at Beach ahead."
「ヒロシ、この意味、わかる?」
「???」
ビーチに降りていくと、ヌーディストがあちらこちらにいました。
(あ、なるほど。服を着るのはオプションね。服を着ても着なくても、どちらでもよいというわけだ。)
そして、ビーチから階段を登って帰るとき、先ほどの看板の裏に次のように書かれていました。
"Clothing is Required."
(ここから先はちゃんと服を着て下さいよ、ということでしょう。)
それにしても、ヨーロッパや北米のこのおおらかさに驚かされます。もし、東京大学のキャンパス内にこのようなビーチがあったとしたら、日本のマスコミからも世間からも「勉学に励まなければならない身において恥ずべき・・・」なんて袋叩きにされるのは目に見えています。
ヨーロッパや北米では太陽光の強度は弱く、日照時間も少ない。だから、全身で太陽の光を浴びたいということが背景にあるのかもしれませんが、ヨーロッパ・北米とアジアの間にはっきりとした文化の違いがあるとつくづく思います。
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品
作品名 「Climbing and Diving in Thailand」(後編)
制作 末次浩
時間 44分
「この世ハ夢のごとくに候」 (足利尊氏が清水寺に奉納した願文の冒頭)
まるで夢のようだったタイ・プラナンの一週間は瞬く間に過ぎていきました。この旅に残された時間はあと3日。最終日はプーケットから飛行機に乗って帰りますので、実質残された時間はあと2日。この2日間をダイビングの拠点として有名なピーピー島で過ごすことにしました。
プーケットから多くの観光客を乗せた大型ボートがライレイビーチに立ち寄りました。私たちもここで乗船。一時間ほどでピーピー島に到着しました。乗船中、嫌な予感がしてたのです。
これだけ多くの観光客がいるということはこの観光客を泊めるだけの施設が必要になるということ。つまり、それだけ多くのバンガローやホテルはこれから到着する小さな島にあるのでしょうか。
大型ボートがピーピー島の桟橋に到着すると、私も含めて観光客は一斉に走り出しました。Aさんは桟橋で私たちの荷物の見張り。私がバンガローの予約という段取りです。
まずは正面の細い道の両側にバンガローが密集していますので、片っ端からバンガローの受付に飛び込んで行きました。
フル(満室)、フル、フル、フル、フル、・・・。ひとつも空いていません。
一旦、桟橋に戻って、Aさんに状況を説明すると、
「空いてなければ、このビーチで星でも見ながら寝ればいいよ。」
今度は右方面に向かい、バンガローの空き部屋を捜しに行きましたが、こちらもダメ。また、桟橋に戻って、最後に左方面へ向かいました。こちらはバンガローはあまり無く、民家が多くあるようなところでした。
ハ~ッ、空いているバンガローはひとつもないと落胆していたら、後ろから声がかかりました。
「あんた、部屋を捜してるんだろ。この部屋が空いてるから、ここで良ければ泊っていけばいい。」
民家のおじさんがこちらを見て、ニッコリと笑っているんです。
それにしても悟り人Aさんの「どうにかなるよ」という言葉通り、必死にもがいていればどうにかなってるんです。必死にもがかなければどうにもなりませんけど・・・。
その間、Aさんはビーチで何をしていたかというと、現地の女の子を掴まえてはツーショットで写真を撮ってたんです。もう・・・。
宿泊できる部屋が決まり、一安心したところで、二人して賑やかな通りにくり出したところ、バッタリと若い日本人女性Bさんに出会いました。多分、この時この瞬間、ピーピー島にいる日本人はこの三人だけだったと思います。Bさんはここでスクーバダイビングのインストラクターをやっているということでした。Bさんは久しぶりに使える日本語が嬉しかったのでしょう。三人の中で話しは盛り上がりました。
Bさん 「折角、美しいダイビング・スポットのあるこのピーピー島に来たんだったら、スクーバダイビングをしていけば・・・」
私 「スクーバダイビングしたことないんだけど。」
Aさん 「俺はPADIのオープンウォーターのライセンスを持ってるよ。」
Bさん 「それじゃ決まりね。Aさんはライセンスありで問題なし。末次さんは”体験ダイビング”をしていけばいいのよ。」
トントン拍子でことが決まり、小さなボートに乗って波の穏やかな入り江に入り、停泊しました。アクアラングなど一式の装備を付けて三人とも海に飛び込みました。もちろん、Bさんのコントロールの下で潜ります。AさんはBさんから10メートル以上は離れない。私は常にBさんと一緒に行動する。
ところで、ライセンスを取得している人のダイビングと”体験ダイビング”では何が違うかというと、潜るということに関してはまったく同じ。予め潜ることに対してどれだけ心の準備をして来たかということが違うのです。はっきり言えば、”体験ダイビング”とは心の準備をしていない人を強引に潜らせるということなんです。
Bさん 「ハイ、これがマスククリアね。わかる。ハイ、では潜って・・・。」
私 「・・・」
Bさんは私が装着しているアクアラングの首根っこのところをいきなり掴み、私を海底に引き込もうとしました。もちろん、潜ることが目的なのですから、その行為は当然のことなんですが・・・。
でも、数メートルも潜らないうちに、私は前頭部がガンガンに痛くなりました。耳抜きが出来てないんです。深く潜れば潜るほど痛みが増します。痛みに耐えられなくなって、Bさんに水面に上がりたいと伝えたいのですが、レギュレータのマウスピースを口に加えていますので話しが出来るわけではありません。身振りで上がりたいとポーズを作ろうとしますが、Bさんには伝わりません。
一方、Bさんはこの美しい海のサンゴやお魚を見せたいと一生懸命、私を深く潜らせようととします。彼女の小さな体でどうしてそんな強い力があるのかと思えるほど私の首根っこを掴んでグイグイと引き込んでいくのです。
こちらは手足をバタバタさせて、「サンゴや魚なんてどうでもいいから、水面に上がりたい。助けてくれ~」って叫んでるんですが・・・。
つまり、これは市中引き回しの刑ならぬ、海中引き回しの刑だったのです、私にとっては。
海から上がってボートに乗り込むと、Aさんはニタニタと笑ってました。私がこのようになると初めからわかっていたのかも・・・。クソーッ。