[撮影四方山話] 終わりの始まり
- オリジナル・シー・ヴイ代表の末次です。
近くの公園に花の苗をたくさん植えました。花は人を明るくします。
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<目次>
1.[撮影四方山話] 終わりの始まり
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品 「Homer sometimes ... - Climbing in Kalymnos -」(前編)
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1.[撮影四方山話] 終わりの始まり
突然ですが、このメルマガは今回を含めて残り12回の発行をもって終了します。
その理由は、メルマガの当初の目的であった個人向けビデオ作品市場の裾野の拡大という点において、十分に達成し、役目を終えたと思うからです。
このメルマガの発行を始めた2003年当時の市販用ビデオカメラはHi8からMiniDVに代わり始めた頃。つまり、漸くアナログの時代に終止符を打って、デジタルの時代に移行してきたときでした。しかし、市販用ビデオカメラの各社のカタログを見ると、購入の動機付けとしては相変わらず、結婚式や子供の運動会の撮影といったものばかり。
市販用ビデオカメラの用途はもっと広いはず。それを使った個人向けビデオ作品市場の潜在力はもっともっと大きいはずであり、その大きさをどうにかして広めたいと思っていました。
そこで思いついたのが、このメルマガの発行。「先月のイチオシ!! ビデオ作品」として、毎月初めにひとつずつビデオ作品を紹介し始めました。いろいろなジャンルのビデオ作品を紹介することにより、その潜在力の大きさを示すことができるのではないかと思ったからです。
それをこの15年間続けてきたわけですが、紹介したビデオ作品の数はもう知らぬ間に180近くに達しているのですね。
ジャンル別として、10のカテゴリーに分けました。「クライミング・登山」、「結婚式・披露宴」、「音楽ダンス発表会」、「家族」、「旅」、「卒園式・卒業式」、「お祭り」、「講演会」、「同窓会」、「ヨット」です。
https://www.originalcv.com/jisseki/sakuhinShoukai/
カテゴリーの分け方があまりにバラバラで適切でないとは思いましたが、逆に、それだけ個人向けビデオ作品の用途は裾野が広いということを物語っているのではないかとも思いました。また、紹介したビデオ作品の中には、上の10のカテゴリーのどこに入れたらよいのかわからないものもありましたが、強引にそのどこかに入れてしまったものもありました。
こうやって振り返ってみると、よくこれだけ紹介して来たなと感慨深いものがあります。まさに世界中、日本中を駆け回って撮影したものもたくさん含まれていますから・・・。
そして、今や個人向けビデオ作品制作の市場には大手のテレビ会社までが参入してきており、15年前に比べてそのポテンシャルがいかに拡大し、様変わりして来たのかがわかります。
もちろん、ビデオカメラの記憶方式はテープからハードディスクへ、そして、今ではSDカードになっており、ビデオ編集自体も安価なソフトが普及して、格段に簡単に出来るように変わって来ました。そして、YouTubeの登場により、アマチュア動画の市場認知が一気に進みました。
このように世界は大きく変わって来ましたが、だからと言って、ひとつのビデオ作品がもつ価値は古今東西変わらないと思います。それは人の心に沁み込む素晴らしいアートです。
メルマガの発行は残り12回をもって終わりにしますが、オリジナル・シー・ヴイの個人向けビデオ作品制作が終了するわけではありません。皆様からビデオ作品制作を依頼され続ける限り、これまでと同様にオリジナル・シー・ヴイを続けていきます。それが私のライフワークなのですから・・・。
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品
作品名 「Homer sometimes ... - Climbing in Kalymnos -」(前編)
制作 Original CV
作品時間 59分
エーゲ海に浮かぶ島、ギリシャ・カリムノス島で本格的なクライミング・ルートの開拓が行われていると聞いたのは2002年頃だったと思います。
雑誌などのマスメディア情報ではなく、クライミング仲間からの口コミ情報でした。そのとき、現地で撮影された複数枚の写真も見せられたのです。コバルト・ブルーの海に浮かぶ真っ白な島。タイ・プラナンのエメラルドグリーンの海とは対照的でした。その美しさにいっぺんで魅せられました。
早速、情報収集を始めました。
ギリシャ・カリムノス島で本格的なクライミング・ルートの開拓が始まったのは2000年前後。開拓を始めた人たちはそれを2000年プロジェクトと呼んでいたようです。もともとカリムノス島は夏のオン・シーズンに訪れる観光客のためのリゾート地だったのですが、冬のオフ・シーズンは観光客が寄り付きません。リゾート施設も観光客が来ないのではどうしようもありません。
現地の住民は、冬はカリムノス島を離れて、ギリシャ本土やロードス島などの大きな島に移って、出稼ぎをしなければいけませんでした。本当は美しいカリムノス島で1年を通して住んでいたかったのです。
そこで冬でも観光客を集める方法がないかと目を付けたのが、カリムノス島のあちらこちらにある大きな石灰岩の岩場。冬のシーズンはここにクライマーを招き入れることが出来ないかと・・・。
ここでもタイ・プラナンと同じようにクライマーと現地住民との間に協力関係が出来上がったのです。
まず、クライミング・ルートを開拓するには大量のクライミング・ボルトが必要になります。それをすべて現地住民側が準備し、クライミング・ルートを開拓するクライマーに無償提供しました。
地元住民は開拓するクライマーに対して、
「クライミング・ボルトを無償提供するから、クライミング・ルートをたくさん開拓して欲しい。そして、開拓したクライミング・ルートの場所や難易度などの情報は地元住民側に知らせて欲しい。」
という具合です。そして、その情報を基に、カリムノス島のクライミング・ガイドブックを作成し、カリムノス島の素晴らしさを世界中のクライマーに向けて発信しました。
そして、クライミング・コンペを開き、著名なクライマーを招待したりして、その知名度は瞬く間に世界中のクライマーに広まっていったのです。
一方、私の方は現地のクライマーにEメールを入れ、クライミング・エリアや宿泊施設の具体的な情報を入手していました。あとは行くだけという状態になっていたのですが、同行するパートナーが見つかりませんでした。企画する段階では深く考えていなかったのですが、滞在期間がネックになっていました。
私としては折角ギリシャまで行くのだから、少なくてもクライミングで2週間、アテネなどでの観光で1週間、計3週間の旅行日程を組んだのです。ヨーロッパではバカンスの考え方が定着していますので、3週間の休みと言っても驚きません。しかし、日本の場合、サラリーマンで3週間休める人なんて、まったくの皆無に近い・・・。
企画はそのまま棚上げされて、数年が経ちました。
そして、あるとき、たまたま、Aご夫妻に出会ったのです。
「今年、ギリシャ・カリムノス島へ行って来たよ。ひと月ぐらい滞在したかなあ。帰ってきたらギリシャボケしていたよ。来年も行くけど一緒に行く?」
「はい、行きます!」
人の運命なんて、どこでどのように変わるかわかりません。そして、Aご夫妻に出会えたことはまったくの幸運でした。Aご夫妻はヨーロッパの文化に深い造詣をもたれていたのです。
まず、これを読んでみたらと一冊の本を手渡されました。シェイクスピアの問題作「トロイラスとクレシダ」でした。トロイ戦争を題材にしているのです。これを皮切りにまずは原点となるホメロスのイーリアスとオディッセイア、アイスキュロスのアガメムノーン、ペルシャ戦争を描いたヘロドトスの歴史と読破していきました。
このことが翌年、ギリシャを旅したとき、どれほど役に立ったか。というよりは、旅というものをどれほど奥深いものにして行ったのか。クライミングだけではない人生の深さを感じるようになっていったと思います。