[素晴らしい教材から] 海にまつわる神と水軍
- オリジナル・シー・ヴイ代表の末次です。
あけましておめでとうございます。本年も皆様のご健康とご多幸をお祈りしています。
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<目次>
1.[素晴らしい教材から] 海にまつわる神と水軍
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品 「シチリア、その夢」(中編)
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1.[素晴らしい教材から] 海にまつわる神と水軍
古代日本において、交通手段の主役は日本が海に囲まれているという環境を考えても船だったに違いありません。
電話やインターネットもない中で、情報伝達手段の主役もまた船だったとすれば、水軍をもっている氏族が政治や経済においても圧倒的な優位に立っていただろうことは容易に想像出来ます。
そこで古事記の中で有力な水軍の手がかりになるのは海にまつわる神だと考えました。
「禊祓いと神々の化生」の段を読むと
「・・・次に水の底にすすぐ時に、成れる神の名は、底津綿津見神。次に底筒之男命。中にすすぐ時に、成れる神の名は、中津綿津見神。次に中筒之男命。水の上にすすぐ時に、成れる神の名は、上津綿津見神。次に上筒之男命。この三柱の綿津見神は、阿曇連等の祖神と以ちいつく神なり。・・・その底筒之男命、中筒之男命、上筒之男命の三柱の神は、墨江の三前の大神なり。ここに左の御目を洗ひたまふ時に、成れる神の名は天照大御神。次に右の御目を洗ひたまふ時に、成れる神の名は月読命。次に御鼻を洗ひたまふ時に、成れる神の名は建速須佐之男命。・・・」
底津綿津見神、中津綿津見神、上津綿津見神は綿津見三神と呼ばれ、福岡県福岡市東区志賀島にある志賀海神社に祀られています。ここを拠点とする水軍を安曇水軍、或いは安曇氏と呼ぶことにしておきましょう。
底筒之男命、中筒之男命、上筒之男命は住吉三神と呼ばれ、ここでは摂津ではなく、福岡県福岡市博多区住吉にある住吉神社を考えています。ここを拠点とする水軍を住吉水軍、或いは住吉氏と呼ぶことにしておきましょう。そして、この住吉神社には神功皇后も合祀されています。
この綿津見三神と住吉三神は天照大御神、須佐之男命と同世代の神になります。
次に「天の安の河の誓約」の段を読むと
「ここに天の安の河を中に置きて誓ふ時に、天照大御神、まづ建速須佐之男命の佩ける十拳剱を乞ひ度して、三段に打ち折りて、瓊音ももゆらに、天の眞名井に振りすすぎて、さ嚙みに嚙みて、吹き棄つる気吹のさ霧に成れる神の御名は、多紀理毘売命。亦の御名は奥津島比売命と謂ふ。次に市寸島比売命。亦の御名は狭依毘売命と謂ふ。次に多岐都比売命。・・・」
多紀理毘売命、市寸島比売命、多岐都比売命は宗像三神と呼ばれ、福岡県宗像市にある宗像大社に祀られています。天照大御神から生まれていますから、天照大御神の次の世代の神になります。
以上の世代間のことと、地理的な関係から考えますと、魏志倭人伝に書かれている朝鮮半島、対馬、壱岐、松浦半島の交易ルートがあった時代は安曇氏と住吉氏が先行してこのルートを牛耳っていたと考えられます。安曇氏のいる志賀島からは「漢倭奴国王」の金印が出土していますし、住吉氏のバックにある春日市の須玖岡本遺跡一帯は北部九州における青銅器鋳造センターですので、その実力とも随一であったに違いありません。
次の新興勢力である宗像氏は利潤の大きいこの朝鮮半島との交易ルートに割り込みたいと考えていますが、まだ成しえていないという状況だったのではないでしょうか。
では前回、大和東征の旗揚げの地とした宇佐にある宇佐神宮の主祭神を見てみましょう。
一之御殿 八幡大神(応神天皇)
二之御殿 比売大神(多岐都姫命、市寸島姫命、多紀理姫命・・・・宗像三女神)
三之御殿 神功皇后
これを見て、あっと思わないでしょうか。
宇佐氏は宗像三女神を取り込むことによって直接的に宗像氏と繋がっており、神功皇后を媒介することによって間接的に住吉氏と繋がっていると。
もう私の意図するところはおわかりでしょう。
大和東征の総大将は応神天皇、遠征の主力部隊は宇佐水軍と宗像水軍、そして、九州の後ろの守りとして住吉水軍を配置したと。安曇水軍はこの東征に関わっていません。
これだけではないのです。大和東征はもっと用意周到で入念に計画されています。
次回は「宇佐氏による大和東征計画」について語ります。
2.先月のイチオシ!! ビデオ作品
作品名 「シチリア、その夢」(中編)
制作 Original CV
作品時間 47分
旅はいつも想定通りに進むとは限りません。現地に行ってこそ、知る事実もあります。
シチリアのパレルモ。貧富の格差がこれほど大きいとは・・・。
ある日の未明、日の出を撮影しようと暗いうちからホテルを出て海岸沿いにある公園で三脚を立てていると、浮浪者が寄って来て、流暢な英語で「パスポートを失くしたんだ。1ユーロ、恵んでくれよ。」と声をかけて来ました。
バルデシのクライミングエリアの中に洞窟があり、近付いてみると、そこに人が住んでました。
テーブルマウンテンの下にある公園に入ると、まだ明るい昼下がりであるというのに、明らかにそれとわかる女性が立っていました。
メイン通りからひとつ入った路地を歩いていたときのことです。私の横で急に車が停まり、ウィンドウを開けて話かけて来ました。
「良い写真が撮れたかい。車道側の肩にカメラをかけていたら、二人組のバイクに盗られちゃうぞ。気を付けろよ。」
私たち3人はクライミングの帰りに、小さなハム・チーズ屋に行きました。店は狭いので私たち3人がそれぞれもつリュックは大きくて邪魔です。そこでリュックを店の玄関の横に置き、一人が見張りに立ち、二人が店の中に入ってハム・チーズを買おうとしていたときのことです。もう一人のお客さんが入って来て、その店の女主人にひとこと言うと、その女主人は私たち二人に突然、「ピーチクパーチク雲雀の子」状態になってけしかけて来ます。何か悪いことでもしたのかと思うと違うんです。
「リュックを外に置いていたら盗られちゃいます。すぐに店の中に入れなさい。」
海外の旅に慣れている私たち3人だと思っていましたが、パレルモに住む彼らから見ると、無防備同然の危なっかしい日本人としてしか映らなかったようです。逆に言えば、旅の期間中に盗難などの事件に巻き込まれなかったことの方がラッキーだったということなのでしょう。
地中海の真ん中に浮かぶ美しい島、シチリア。
しかし、地中海の真ん中にあるという地理的な特長はそこがいつの時代においても重要な戦略的拠点であったことを物語っています。シチリアを支配した民族はギリシャ人、カルタゴ人、ローマ人、ゲルマン民族、アラブ人、ノルマン人、イスパニア人・・・。新しい民族が来るたびにシチリアの人々は新しい人間関係を築こうとしたのであろうし、逆に良好な人間関係が築けなければ自らの防衛は自らで行うというマフィアの組織が生まれる下地がそこに出来上がったのでしょう。
フランシス・フォード・コッポラ監督の映画「ゴッドファーザー」はパレルモをロケ地として制作しています。パート3のクライマックスシーンであるコルレオーネ家の令嬢が凶弾に倒れるシーンは豪華なロイヤルボックスがあるマッシモ劇場で撮影されています。
このパレルモの街を歩き、その街の雰囲気を直接肌で感じることによって、「ゴッドファーザー」という映画がもつ深い人間の絆に少し近づけたように思います。そして、ニーノ・ロータの「愛のテーマ」が頭の中にいつでも響き渡るのです。