作品名 「**** 帯解きの儀」
制作 東京都女性
作品時間 34分- 11月に入り、雨上がりの清々しい朝。20数年ぶりに自由が丘の駅に降り立ちました。
ある店の扉を入って行くと、すでにA子ちゃんの髪結いは始まっていました。ママは薄い藤色の着物を品良く着こなし、パパも袴姿で見守っています。
A子ちゃんの前髪は垂らすことなく巻き上げられて、ふっくらとした本格的な和髪に結われました。白色と茜色のちりめんかんざしを挿して出来上がりです。
振袖の着物は緋色で、そして、まさに桜色をした桜の文様が織られています。純色を使った子供っぽい派手さはないのですが、浮き出てくるような鮮やかな存在感があります。
帯は菜の花色で、帯揚げは若芽色。帯締めをし、箱迫、扇子を挿して着付け完了。純白の足袋に草履を履いて、パパとママの前に、その姿を披露しました。
「ゴージャスで本格的だね。」
と、この店のスチールカメラマンから一言。
写真撮影を終えると、氏神様のいらっしゃる神社へ直行。おじいちゃん、おばあちゃんはすでにそこで待っていました。
「おめでとう。」
と、孫の華やかな姿に満面の笑みをたたえています。そして、神社でお参りを済ませました。
その後、親族一同が集まって食事会が催されました。食事が進んで来ると、着物を着慣れていないA子ちゃんは場に飽きて、駄々を捏ね始めました。
A子ちゃん:「もう、イヤダヨー。」
叔母さん:「それがかわいいよね、子供らしくて。嫌だと言っているのも後から想い出になるのよ。だから、ギリギリまで嫌がってもらって・・・。」
「宴もたけなわですが」とパパからの挨拶が始まりました。
「本日はA子の七五三のお祝いにお越し下さり、ありがとうございます。A子はおかげさまで7歳になりました。七五三で7歳は『帯解きの儀』と呼ばれ、紐付きの着物から大人と同じ帯を結び始める年と言われています。」
パパはA子ちゃんの方を振り向き、
「だから、今日は太い帯をしたのよ。」
と説明すると、
A子ちゃん:「脱がせて・・・。」
親族一同からドッと笑い声が出て、華やかな儀式も無事にお開きとなりました。
後に、A子ちゃんから、パパとママへ手紙が送られました。
「パパ 、ママへ
七五三をいわってくれてありがとう。
これからもおねがいします。
おかげで七さいになれました。
これからもA子はせいちょうしていきます。
パパ、タバコやめてね。だいすき。ありがとう。
ママ、いつもありがとう。だいすき。
A子より」 - メールマガジン No. 148 2015-12-01