作品名 「新郎新婦生い立ちの記」、「Happy Wedding」
制作 埼玉県女性
作品時間 10分、8分- 昨年の秋ごろ、いつもヘビーな編集を依頼して下さるA子さんからメールが入りました。
「今回、友人が驚くほど急な予定で結婚式をすることになり、余興でお祝いメッセージを流したいと言われました。
ですが、まだネタの撮影もしていません。
まず末次さんが、この年末年始に日本にいらっしゃるのかどうか? 私の依頼を受けていただけるかどうかの確認と…」
1月10日に結婚式だということですので、完成したビデオ作品は遅くとも1月8日にはA子さんのお手許に届いていなければなりません。
仕上げチェックがインターネットタイプ(インターネット上で作品をチェックしていきながら仕上げる方法)をご希望であり、いつもヘビーな編集を依頼して下さることも考え合わて、12月25日までに映像素材を届けていただけるようにお願いをしました。
その12月に入ると、今度は新婦B子さんからのご依頼で、お色直しで席をはずしているときに会場に流す新郎新婦生い立ちのビデオも作成して欲しいと連絡がありました。
ビデオ作品1本のご依頼のはずが、2本になったわけです。それもお受けすることにしました。
21日に新郎新婦生い立ち用の80枚ほどのお写真が届きました。
26日には映像素材が届きました。中学校、高校時代のアルバム、たくさんのお写真、miniDVテープ、映画のDVD、そして、たくさんの音源。
27日には追加でアマゾンから直接私宛てで使って欲しいという音楽CDが送られて来ました。
それで終わりではないのです。メールに添付して使って欲しいというお写真もまたまた届きました。
A子さんの気合いの入り方がわかります。
A子さんとB子さんのお母様とは次のような経緯があったのだそうです。
「B子のママは、昨年亡くなりました。
友人の中でも、病床にお見舞いしたのは私だけだったんですが、その時に
『B子は男運が悪そうだから…。変な男に騙されないか心配なのよね。A子ちゃん、お願いね?』
って、頼まれました。」
理屈ではないけれど、B子さんのお母様の妙に説得力のあるお言葉。
B子さんは高校を卒業して20年経って漸く、男運に恵まれようとしているのです。
A子さんばかりではなく、私自身も「これは一肌脱がなければ・・・」という気になりました。
そこで、ビデオ作品「新郎新婦生い立ちの記」は以前、桜吹雪のスライドショーで作ったものから一歩進んで、お写真の人物の前後に蛍が飛び回っているようなものを考えました。
それをA子さんに伝えると、
「ご好意ありがとうございます。前回の桜吹雪のスライド!
めちゃくちゃ好評で、私もお気に入りでしたが、映像に詳しい方に聞くと、とてもとても手間のかかる、手の込んだものだと。。。
今回は、日にちに余裕がなく、しかも素材の送付も遅れてしまったのに、同じように手の込んだ作品に仕上げていただけるなんて…。
甘えていーんですか? 本当に? 後悔しないで下さいね? 途中で、引き返したくなったら…、遠慮なくお申し出くださいね?」
それほど喜んでいただけるのならば引き返すわけにはいきません。やるしかないです。
と言っても時間はあまり残されていません。
28-30日で「新郎新婦生い立ちの記」の1次仕上げを完成、
31-2日で「Happy Wedding」の1次仕上げを完成。
3-6日まで、修正依頼が来るたびに、修正をして追い込んで行き、7日発送。
8日午前中にA子さんのお手許に届くという段取でいくことにしました。
そして、30日には「新郎新婦生い立ちの記」1次仕上げ完成、1日には「Happy Wedding」の1次仕上げを完成していたのですが、2日朝、編集用に使っているパソコンの電源ボタンを押してもパソコンが立ち上がらないのです。
クラッシュした!!!!
その瞬間、頭が真っ白になりました。本当に手を合わせて映像データが生きていてくれることを祈りました。再度、ビデオ作品を作り直す時間はもはや残されていません。
そーっとOSを入れ直すとクラッシュしたのはOSを入れていたSSDであり、映像データを入れていたハードディスクは無事だとわかりました。
このとき、神様に何度感謝のお礼を言ったか、わかりません。
本当に、God bless me! だと思いました。
とはいうもののレンダリングに相当に時間がかかることを考えるとSSDは不可欠です。すぐに、上大岡駅の京急百貨店に入っているヨドバシカメラに行き、購入することにしました。
時は1月2日。この日は京急百貨店の初日。華やかな正月気分一色です。そして、そこには福袋を買うためにお客様の長蛇の列が出来ていました。
午前9時の開店と同時に、皆さんは走って中になだれ込み、福袋を買い求めています。その中で真っ青な顔をして、とても正月気分ではいられない私はヨドバシカメラの店員を掴まえて、
「これと同じオンボードタイプのSSDはありますか。」
と質問していたのです。
「申し訳ないのですが、今、在庫がありません。お取り寄せとなり、2-3日はかかります。」
「そんなに待てないよ。ではSATAタイプのSSDを下さい。それでなんとかやります。」
そのとき、編集機のパソコンのSATAソケットが空いているか確信はなかったのですが・・・。しかし、帰ってパソコンを開いてみると、SATAソケットは空いていました。
再び、God bless me! でした。そして、その日の夕方には元の編集機の状態に戻っていました。
その後、ビデオ作品「Happy Wedding」が2次仕上げ、3次仕上げと進んだとき、A子さんからどうしても2枚の写真を使って欲しいと依頼されました。
ところがその2枚のお写真はこちらに届いていなかったのです。
もう残された時間はありません。
その日、A子さんは埼玉から車を飛ばして、横浜の私のところまで2枚のお写真を直接届けてくれたのです。スキャナーで取り込んでEメールに添付して送ってくれても良かったのですが・・・。
『美しい』ビデオ作品はたくさんの人の気持ちを織り込んで、作っていくものだと思います。
今回のビデオ作品にかけた想いは必ずや新婦や天国にいらっしゃる新婦のお母様にも届くものと信じています。 - メールマガジン No. 150 2016-02-01