作品名 「***十三回忌」
制作 福岡県女性
作品時間 19分- 従姉から電話がかかって来ました。
「DVD、ありがとう。今回のカバー表紙にはびっくりしたわよ。これも時代の流れだよね。」
そのカバー表紙は互いに向きは逆で、相手の右肩を枕に、ほっぺたをくっつけて寝ている従姉の二人の孫の姿だったのです。
天国にいる伯母も、伯母にとってはひ孫にあたるその子供達の姿をご覧になって微笑んでいるかもしれません。
時代の主役は確実に替わっていっています。
”行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。”
- 鴨長明<方丈記>
さて、今回の法要が行われたお寺のご院家様も時の流れに従って、髪が真っ白になられてしまいました。その法話です。
「机で仕事をしていると、書類を捜しに他の部屋へ行かねばならない時があります。廊下を歩いていく途中で家内に会い、
『**さんからお電話があり、***ということでした。』
と聞いて、『ふん、ふん』と答えました。
そして、目的の部屋に入った途端に、『アレ、何を捜しに来たのかな』と思うんです。すぐに思うことは家内がいらないことを話しかけなければ、このようなことにならなかったのにと人のせいにしてしまいます。
ブツブツ言いながら一生懸命に部屋を見ますが、もうわかりません。
そういう時は元の部屋に戻り、今まで仕事をしていた書類をずっと眺め直します。すると、『ああ』と言って再び先ほどの部屋に捜しに戻るのです。
ある人のエッセイで、76歳前後の方ですが、私も歳相応に部屋にモノを取りに行って、『はて、何を取りに来たんだ』と思い出せずに過ごすことと、自分の部屋に帰ることが多くなったと書いてありました。
ある時、何回か同じようなことで部屋にモノを取りに行った時、
『はて、私はこの部屋に何をしに来たんだ』
と思ったと同時に、
『果たして、私はこの世に何を取りに来たのか。何をしに来たのか。そういう目的がないことに気付き、寂しい思いをした。そして、目的を持って生きている人を見ると羨ましく思う。』
ということが書かれていました。
我々も一度、この世に何をしに来たのか、ということを考えることも大切なことではないかと思います。
もうここまで生きて来たんだから、そういうことを考えなくていいと思う方もおられるかもしれません。ここまで生きて来たということはもう残りもないわけです。残りがなければない今こそ、私はこの世に何をしに来たのか、そして、どこに行こうとしているのかということを深く考えることも大切ではないかと思います。」 - メールマガジン No. 154 2016-06-01