作品名 「***スポーツクライミング2015」
制作 Original CV
作品時間 16分- 仏教用語で「四苦八苦」という言葉があります。
四苦とは生老病死。生まれること、老いること、病むこと、死すことの苦しみ。
そして、八苦でいう残り四つの苦しみとは、愛別離苦、怨憎会苦、求不得苦、五蘊盛苦。愛する人と別れていかなければならない苦しみ、恨み憎しんでいる人と会っていかなければいけない苦しみ、求めるものが得られない苦しみ、そして、・・・・。
五蘊盛苦とはこの漢字だけを見ていると何のことかよくわかりません。
五蘊とは色・受・想・行・識(身体・感覚・概念・心で決めたこと・記憶)ですが、・・・。
「五蘊盛苦」の元のパーリ語は、「パンチャ・ウパーダーナ・カンダ・ドゥッカ」という言葉で、 「パンチャ」は「五つ」、「ウパーダーナ」は「執着する、固執する」、「カンダ」は「要素(蘊)」、「ドゥッカ」は「苦」という意味なので、 「五つの要素に執着する苦しみ」というのが原文の意味だそうです。漢訳の「五蘊盛苦」では「ウパーダーナ」、つまり「執着する」という意味が入っておらず、原文のニュアンスが伝わりにくい訳となっているのだそうですが、これでもまだよくわかりません。
有名なお寺のホームページでこの五蘊盛苦の解説を読みましたが、どれも字面を追っているだけでピンと来る説明はありませんでした。
ところが、ある日、何かの本でわかりやすい説明に出会いました。
五蘊の中で、色は身体を表し、受・想・行・識は心を表します。「ウパーダーナ」は執着すると言葉通りに捉えるのではなく、今風に言うとバランスを取れないと解釈すればよいというのです。
つまり、五蘊盛苦とは身体と心のバランスが取れない苦しみだというのです。これならピンと来ます。
上手なクライマーのムーブをたくさんビデオで見てテクニックを研究している私は当然ながらそのテクニックが頭の中で(心で)わかっているはずなのですが、実際に岩場へ行って自分でやってみるとまったく身体が反応しません。
身体と心のバランスが取れていない五蘊盛苦を山と言うほど経験しているのです。
言い換えれば、私が岩場へ行ってクライミングをするということは四苦八苦の苦行を繰り返していただけということになってしまいそうです。もっともっともっと苦行を積んで身体と心のバランスが取れるようになればいいんですがね~~~。
すみません。前置きが随分と長くなってしまいました。
この度、お二人の女性クライマーのビデオ作品「***スポーツクライミング2015」をそれぞれ作りました。
撮影している日時、場所が重なっていますので、その映像を編集して作り出す2つのビデオ作品は同じような感じになるのだろうと皆さんは思われるかもしれません。
しかし、そうはならないのです。それはお二人の個性が違うから・・・。
Aさんは体の中心線がストレートで、その重心に立つ感覚が際立っています。いわゆる天才肌です。多くのクライマーを見て来ましたが、このような感覚を持つクライマーはそんなに多くいません。
例えて言えば、白鳥の湖を踊っているクラシックバレエのダンサーが中心線がまったくぶれることなくクルクルと回り、体の伸身のラインがきれいに伸びている感じです。体操でいうスワンですね。
そのAさんの映像の1カットをトリミングするとき、ストレートなイメージが出来上がっているので、クライミングのムーブ以外の動作の映像は省いていきます。そうすると短めなテンポのカットが連続していきます。
ここにアップテンポなビートの効いたBGMを入れると、アーバン・エレガントでスタイリッシュなビデオ作品が出来上がります。
Bさんは以前に比べてパワーがついて来ましたので、ハイステップに立ち込んでいくようなムーブが多くなって来ました。また、体が柔らかく、粘りがあります。
そのBさんの映像の1カットをトリミングするとき、クライミングのシーケンスを模索しているような粘りのある部分はカットせず、出来る限り採用していきます。そうすると長めなテンポのカットが続きます。
ここには心の綾をよんでいるようなBGMを入れると、エモーショナルなビデオ作品が出来上がります。
今回紹介したビデオ作品はふたつの例です。BGMの入れ方はあえてわかっていながら逆の効果を狙って入れたりすることもあるので、様々です。その時々の編集者の感性ですね。
最終的にどのようなビデオ作品になるかはGod knowsです。そして、そのビデオ作品の効果はGod bless youでしょう。 - メールマガジン No. 156 2016-08-01