作品名 「クライミングと歴史探訪の旅 ~フィナーレ・リグレ、ラベンナ~」(前編)
制作 Original CV
作品時間 52分- 第3回目のイタリアへの歴史探訪の旅の目的地はラベンナ。イタリア半島の長い靴の東の付け根にあります。
しかし、その前にクライミングをしようとフィナーレ・リグレに行くことにしました。こちらはイタリア半島の長い靴の西の付け根にあり、ジェノバから車で小一時間ぐらいのところにあります。つまり、誰しもが憧れるリビエラにあるのです。
今回はジェノバからフィナーレ・リグレに車で向った一日の模様を紹介することにしましょう。
ジェノバの朝は澄み渡った空で明るく、リグリア海の港街にふさわしい陽光でした。
さて、今日はまずレンタカーを借りに行かねばなりません。日本で得た情報ではレンタカーは街中にあるということです。ホテルのカウンターのお兄さんに聞くと、地図を差し示して、「このホテルから歩いて15分のところにあるよ」とアドバイスしてくれました。
重い荷物を抱えて15分も歩くわけには行かないので、タクシーを呼びました。
タクシーに荷物を積み込み、いざ出発せんと、レンタカーのアドレスをタクシーの運転手に見せると、タクシーの運転手は「これはジェノバ空港内のアドレスだよ、街中じゃないよ」と言います。こちらは、「空港ではなくて街中だと日本で聞いた」と主張。タクシーに乗ったというのに目的地を定めることが出来ないわけです。
タクシーの運転手は携帯でレンタカーの電話番号に電話をかけました。
「アドレスを見ると空港内になっているのに、客は街中にあると言って空港内じゃないと言い張る。どうなってるんだ?」
結局、タクシーの運転手が正しく、このレンタカーはジェノバに一ヶ所しかありません。そして、それは空港内だということで一件落着となりました。
ということは、あのホテルのお兄さんのアドバイスは一体何だったんだ?
さて、無事にレンタカーを借りて、フィナーレリグレに向かいました。高速に乗るとジェノバから小一時間でフィナーレリグレに着きました。しかし、目的地の本日のお宿Residence Gliciniがどこにあるのかがわかりません。こちらもすぐに見つかると思っていた当てが外れました。
ある人に聞くと、「海岸線に出てSavonaの方に戻り、ひとつ目のトンネルの前を左に上れ。」と言います。 行ってみると、トンネルの前を左に上がる道はありません。
そこでまた、ある人に聞くと、「フィナーレリグレは3キロメートル向こうだよ。」と言います。 そりゃそうでしょ。そちらから来たんだから。確実に分かるひとつのことはSavona方向へ行き過ぎたということです。
また戻り、それらしい雰囲気の小道を右に入って行きました。車を停めて、バーに入り聞いてみると、「来た道を200メートル戻り左に曲がれ」と言います。 それらしいところを探しながら、左に上って行っても見当たりません。
小さなホテルに入り、聞いてみると、「来た道を戻り右に曲がって、再び右にまがれ」と言います。 それらしいところを注意深く探してみましたが、やはりわかりません。
お手上げです。小さなホテルの前に車を停めて、目的地の宿に電話をしました。そうすると、「もう近くまで来ているよ、チャリンコで迎えに行くから待ってて。」と言います。
そして待っていると、顔立ちの優しいお兄さんがチャリンコで迎えに来ました。チャ リンコに誘導されながら、5人が乗った車はとうとう目的地へ着きました。ホッとしたと同時に、こりゃわからないわけだと納得しました。
この宿の表札はA5ほどの大きさでしかありません。大きな看板はないのも道理で、この宿は普通のアパートを改築した程度のものだから。
つまり、これを日本風に言うと、横浜駅で降りて、南区大岡にある末次さんの家はどこですかと聞いて、末次さん宅を訪ねることと大差ありません。
だからといって、この宿が悪いというわけでは決してありません。
満面に笑みをたたえる宿のご主人とそのお父さん。お世話になる部屋のドアには「ようこそ」と日本語で書かれた紙が貼られていました。
おまけにお父さんからは日本語の「ようこそ」の文字を指差して、「これはなんと呼んだらいいんだ」と言われる始末。 「ようこそ」という呼び方もわからないまま、お気持ちで私たちを歓待してくれたのです。そのお気持ちを本当に大切にしたいと思いました。
この宿に日本人が泊まるのは初めてとのことでした。 - メールマガジン No. 187 2019-03-01