作品名「(仮題)メッセージ」
撮影 Original CV 制作 山口県男性- 元旦に一枚の年賀状が届いた。裏にはヨットが停泊している船着場の美しい写真が貼ってあり、そして、表には小さな文字でびっちりと文章が書かれていた。
「南トルコのアンタルヤの街は崖の上にあり・・・。この地方にはローマ時代の遺跡が多く、旅行者にとって気が抜けない地方になる。水道橋もあり、円形劇場もあり、エジプトのクレオパトラとローマのアントニウスが逢瀬を楽しんだ町でもある。」
私も3年前、トルコに近いコス島やカリムノス島を訪れているので、なんとなく親近感が湧いた。
そして、それから文章の語調が変わった。
「元気になって、また旅に出たいです。次に帰られたら今の私をビデオに写して下さい。・・・ 終わりの近い人のメッセージのつもりです。」
私はすぐに連絡を取り、撮影に行く旨を伝えた。山口県まで1000km足らず。車で一っ飛びである。
その日は寒い一日であった。お体に差し支えるといけないので、外での撮影は止め、レストランで食事をしながら撮影することにした。食事中の会話はごく普通の世間話である。撮影はそのあるがままのお姿を撮った。肩肘を張らない自然のままで良かったのだと思う。
何気ない所作の記録、それこそが遺産なのだと思いながら・・・。 - メールマガジン No. 66 2009-02-01