作品名「The Way of The Sakura Climbers」
撮影 Original CV 制作 FTG
作品時間 42分- 4月に、40歳代前の、4人のカナダ人クライマーが日本へやって来た。2組のカップルなのである。
「目的は?」と聞くと、「桜がみたい・・・、富士山がみたい・・・、クライミングしたい・・・、・・・・・。」
つまり、日本で出来ることならば何でもやってみたい、ということなのだろう。
彼らの滞在期間は2週間。しかし、きっちりとした予定が決まっているわけではない。足の向くまま、気の向くままの旅なのだ。まず、関西空港に到着した後、大阪、京都、そして、高野山にも足を運んだようである。一週間経って、漸く関東の方へやってきた。
私は伊豆高原駅で彼らと出会い、その後、三日間を伊豆半島の城ヶ崎、城山、そして、三浦半島の鷹取山で一緒にクライミングをした。彼らは満開の桜を見たし、雄大な富士山も見たし、クライミングも楽しんだのだ。
そして、最後の晩、横須賀市追浜の餃子が美味しい中華料理店に、カナダ人を含めて20人弱のクライマーが集まった。この店の若女将から「この方達はどういう方達なのですか」と聞かれるほど、会話はほとんど英語。追浜の小さな中華料理店では考えられないほど、日本語の会話は少なかった。
盛り上がったところで、一人の日本人女性が立ち上がった。「Here we go!」と言って、皆を静粛にし、注目を集めたところで、君が代独唱を行った。私は彼女が喉のポリープを摘出手術しているため、高音が出ないことを知っていた。
それでも彼女は気品をもって歌ったのだ。
それを聞いたカナダ人たちは立ち上がった。胸に手を当て、誇りを持ってカナダ国歌を合唱した。
このとき、私たちは言葉という垣根を越えて、心が通じ合っていると感じたのだった。
カナダ人の中には日系3世の人もいた。おじいちゃん、或いは、おばあちゃんが若いときに過ごした日本という国はどういうところなのかを、この旅で見たかったし、知りたかったのかもしれない。
私たちは彼らに、誇りがあり気品のある日本人の姿を多少なりとも見せることができたのではないかと思う。そして、彼らもまた、日本人の血を持ちながらもカナダ人としての誇りを持っていることを自覚したのではないだろうか。
私はこの作品の題名を付けるにあたって、彼らに何かしらの称号を与えたくて仕方がなかった。そこで閃いたのが「The Sakura Climbers」なのである。もちろん、私が作り出した造語だ。
「The Way of The Sakura Climbers」(サクラ・クライマーへの道)
彼らならば、私の伝えたいことを理解してくれると信じている。 - メールマガジン No. 82 2010-06-01